くもり玉AF NIKKOR 35-70mm F2.8は欠陥品

2.8Dも2.8S(無印)どちらもです。

下書きの時点ではタイトルの最後を「欠陥品」にしていましたが言い切ることにしたのはあまりにもひどいためです。Nikonユーザーには有名なくもり玉だそうでメルカリのコメント欄で教えて頂いたものの「バラして中玉拭けばいいんでしょ?」と甘く見ていました。このレンズで初めて見た、バルサム切れェ……

最初に買った中古レンズ1本だけで終わればまだ運が悪かったであきらめもつきますが立て続け、しかもバリエーションに富んでいて全然うれしくないイベントが繰り広げられました。作ったやつ出てこい。

4本とも中玉が盛りだくさんなバルサム切れクモリに加え、1本は後玉までバル切れというダブル役満まで上がってしまうっていう、さすが大三元レンズだね!ってぜんぜんおもしろくないよ?ヤフオクやメルカリで薄ぐもりとか小くもりと書かれていたらまずこれです。バルサム(balsam、ボールサム)という接着剤が広がっているのですから拭いても取れません。

レンズ構成を見るとレンズのガラスが密集しまくりで、通しF2.8を出すため無理に大口径レンズを設計し作ってしまったのでしょうか?詳しくは知りませんがとにかくだめすぎですこのレンズ。ヤフオクでも売れ残る売れ残る。下のスクショのお気に入りマーク付けてる出品なんて3千円切っても1週間以上入札ありません。即決ありの4千円以上は相場や事情わかってない大量出品です。

写真見ると薄曇りだったり、悪質なのはそもそもレンズの中の写真が無いものがだいたい3~7千円で落札されていますが、バル切れのクモリは厚みや濃さに個性があり見ただけでは汚れのクモリとの違いがわかりませんから画像を見て「少しくらいくもっていても」と甘く見ない方がいいです。撮るとすごいレベルのソフトフォーカスかかります。「素人ですおそらく撮影には影響ないと思います」のような口上は罠です。素人目に見ても影響あるわこんなの。

ただ、これ以外でどうしても通し2.8の大三元コレクションしたいとなりますと、28-70mmのAF-Sになってしまい財布に強烈なダメージが……。安い物はAFきかないとか中玉にカビある難ありが2万前後、まともなものは相場3-6万円~といったところです。

それでも強くAF-Sの方をおすすめします。

30-75mmのF2.8クモリは不治の病、再発の可能性もあるガンみたいなレンズだと思っています。一度もくもっていないならそれはそれでヤバくて、一度ばらしたレンズなら二度目以降の中玉外しは容易かも知れませんが、バラされてないレンズはそもそも中玉が取れない可能性があり、分解してる人のブログ読めばどれほど難しいかよーくわかるはずです。

3つめのヨッシーさんは分解ジャンキーなのであっさりやってますが「困った時のヨッシーハイム」と私がワラスガするほどスペシャリストな変態なので彼の「簡単に外れます^^」は鵜呑みしない方がいいです。このレンズ、AF-Sシリーズ分解とは違う意味で難度高め、オールドのヤバさに近い「これ以上は進めない」詰みがあります。

運良く中玉が外れたとしてもそれは途中経過、本当にヤバいのは中玉のレンズの塊を1枚ずつバラして行き中身を拭いてみる段階までで、拭いてみる以前に開かずあきらめてくもったまま使う人もいるくらいです。私は溶剤でダメなら万力やハンマーでレンズ割る勢いで意地でも全部開けますが、バルサム切れまで分解再接着しようとまでは思いません。(ちなみにヨッシーさんはやってた。*個人でバルサム切れ修理するのこの人だけです多分。)(もうひとつちなみに私は万力で本当にレンズ1枚割りました。テヘペロ)

このレンズはSとDの2種類あります。

  • 35-70mm F2.8 ※何も書いてない無印がS
  • 35-70mm F2.8 D

ヨッシーさんが他から聞いた話だとSの方はヤバいと書かれていましたが、バル切れ引きまくった私に言わせるとヤバいのはDの方です。まともなD見たことないので悪い印象が強いのかも知れませんが、もうバラしたくない……。とはいえSなら大丈夫とは言ってません、Sは1本だけ自分用に復活できたのでもういいやと思っただけで。

ニコン35-70/2.8の欠陥部分を図解

ニコン公式の設計書と思われますPDFの流出(?)が検索にヒットしたのですが、ニコン公式サイトとかではないので出典リンク先に行くなら自己責任です。nlドメインはオランダ。

出典 http://www.zilver.demon.nl/55mm/nikon_service_manuals_and_brochures/data/lens/AF%2035-70mm%20f2.8D.PDF

色を付けて見やすくしました。左がレンズの前、右がマウンター(本体、ボディ取付)側の断面図で、この図は2.8Dの方になっていますがレンズ構成はSも同じです。主な違いはD(距離わかる方)はマウンター側内部に基板が付いています。

水色は時々汚い普通のレンズで、カビやチリほこりクモリありがちなガラス。黄色は時々くもっていて、オレンジが次にくもっていることが多く、赤がガンです。メルカリやヤフオクで「ん?くもってるのかな?」と疑わしかったり、必死に角度ずらしてくもってないかのように絞り羽を見せているレンズも赤がくもってるはずです。

こればかりは外からの見た目と実際に分解してどの程度、どのレンズがくもっているのか数を見てこなしている人間にしかわからないと思われますがそれは今は置いておき、角度によってこのくもりはごまかせるのでたちが悪いです。

「右ならアリかな?」と思ったなら希望的観測というものでどちらも同じレンズです。左はコントラストが弱いのでよりくもって見えますし中玉のガンレンズを光らせてるのでバル切れがよく見えます。

右はその逆にきれいっぽく見えますが絞りの中心を見るとぜんぜんくもってるのがわかるかと。

これでさえだめです。

こちらは故意にくもりが見えない角度を探し、透明に見えるよう反射をずらし40枚くらい撮った内の1枚。

ここから更にフォトショでコントラストを上げる、トーンカーブいじる、シャープネスかける、ノイズを乗せて彩度を調整すればクモリは完全になくなりますが普通に詐欺なのでそこまでやってる人は多分いないと思うのですが、もしやられていてもジャンク品NCNRすり替え防止のため返品不可とか書かれていたら1.5~2万円くらいで落札しても泣き寝入りするのがマナー、うそは書いていなかったとしてヤフオクなら評価「良い」にしなければ報復評価が怖いですよね?

ちなみに「すり替え防止」も他意あり、本当に防止したいならSN(シリアルナンバー、製造番号)写しとけばいいのですから本当の意味は「返品防止」の遠回しな言い分です。まあ、私のように分解できる人間なら中玉だけすり替えるなんて技もありますから、そこまでされるとSNに意味はなくなりますが。

話を戻してもっと詳しい図。

書いていませんが左が前玉、右は後ろ玉、これらそれぞれプラスチックの筒で一体型になっています。色を塗ってないだけで前も後ろもセットです。また、後玉は黄色から右3枚と左3枚(接着で現物は2枚に見える)。

中玉のどこがヤバいか?

まずこの中玉レンズセットが丸ごと外れません。工具はカニ目レンチ、レンズサッカー、吸盤オープナー、アセトンか無水エタノールとそれを注入するノズル、が最低限必要となり工具代に最低でも6千円かかりますが、費用以前にレンズ外しに慣れていない人は3日経っても外せません。なぜならニコンの人以外が分解するようには製造していないから、そしてこの中玉まで届くカニ目レンチが存在しません。あるのかも知れませんが見たことなし。

意地になってジャパンホビーツールの3千円以上するV字型のレンチと、ただの棒2本なのに2,600円もする延長も買いましたがびっくりするくらい使い物になりません。買わない方がいいですこの2つ。ノーマル状態だと短すぎて前玉の一番前か時計の裏蓋くらいしか外せないし、長い方は力が入らなくなるので千円の中華カニ目レンチの方がマシ。

苦労して中玉が丸ごと外せても次にオレンジ(左)のレンズ2枚組が外れず、レッド(右)の1枚が外れず、オレンジがくもっているならオレンジの2枚も1枚ずつに外さなければならず、前玉のレンズ4枚の内部にカビがあれば前玉もバラシ、前玉バラシが嫌なら前玉レンズセットを丸ごと外すためにヘリコイドから分解(私に言わせるとレンズ分解よりこっちの方がイヤ)があります。

後玉の初分解は慎重に

SとDで違います、これはSの方でDは基板が側面に付いているのでフレキシブルケーブルに注意。

もうこの段階でわかりますが後玉がくもってます。キズではないんです、まだらバルサム切れ。

2枚ともダメなのがわかるでしょうか?

手前のレンズはこのページで最初にアップした画像のレンズ、奥に見えるキズ入ってるみたいなレンズの方は全体的にくもってます。もちろん中玉もくもってますからダブル役満どころかトリプルですね。なんでリコールにならなかったの?これ。他のレンズでこんなひどいの見たことないよ……。ていうかまともな35-70/2.8見たことないけど。

後玉には最大の詰みレンズが存在

くもり見え見えな中玉を中ボスとするとラスボス(裏ボスでもいいです)がこれ。後玉の部分だけ切り出して再着色で分けたものです。

右はすぐにマウンター、カメラ本体との接続部分でそっち(右)から行きましょうか。

水色のレンズは青いプラスチックにくっついているセットです。黄緑はバラなので1枚だけ取れます。そして黄色のレンズと黄プラが接着されています。なので青と黄のプラをバラせば3枚ばらけることになるので全レンズの両面を拭けます。

問題のラスボスは左のセット。紫2枚はバルサムで接着されている見た目1枚の凹レンズ、バル切れすると当然くもりバルサム剥離しなければどうにもなりません。そして赤とピンクと紫は外れた記憶がないので3枚2組が1つのプラに接着されているのならこれも剥離しなければ中に行けません。

この記事書きながらメルカリ見ていて3千円につられて手が勝手に動いて戦略的衝動買いしたやつがまさにこの対ラスボス戦で、赤と紫の間の紫側にカビがびっしり。アセトンや無水エタノール漬けしてみたり、万力+ハンマー、ヒートガン、手を尽くしましたが外れません。このレンズのラスボス遭遇2回め、詰み。みなさんが被害に遭ってる中玉なんてこれに比べたらザコです。

やたら脅してハードル上げてる?

そう見えるならその通りで、このレンズは本当に甘く見ない方がいい。

単焦点のオールドレンズは固くて外れない、比較的新しい望遠レンズは筒が長くて作業が困難、この2つを兼ね備えた、これらを踏まえて覚悟して分解に臨むべきニコン最悪の欠陥レンズ。くもって使い物にならないからと壊す気で分解しようと工具まで買ってしまい金銭的泥沼になりませんよう。カニ目、ゴム、サッカー、アセトン、この最低限の時点で6千円超えます。

アホな悪い例が私で、このDとSレンズを知らずに買い始め4本になった時点で2万円を超えていますからAF-S 28-70/2.8に手が届く出費、費やした作業時間もムダだとしますと1本平均2時間として10時間なら時給千円で1万円。

私のように分解が趣味や楽しいと思えるならいいかもしれませんが、写真を撮るために買うのでしたら作業費と時間を食うだけの勝てないギャンブルになる可能性高いと思います。

また、個人のブログで誰か書いてましたが、後玉に行く分解時のプラスネジも状態が悪いものだとナメて開かずのマウンターになります。無水エタノールをかけながらバチクソびびりながらの私でも1本やらかしました。鉄工用ドリルでネジぶち抜いてマウンターのプレート外しましたが。

35-70/2.8は、くもる、重い、AF遅い

被害者増えてほしくないのでとどめを刺しておきますと、上の方で書いた通り高くてもAF-Sの方を強くおすすめします。型番AF-SでもDXじゃないフルサイズですし。

35-70の方は技術力アピールや話題作りのため無理やり作られた大口径な印象があり見た目より重く、今2本量ると680~720gありましたから下手するとカメラ本体より重いし、超軽いD60でさえ付けると合計1kgを軽く超えて街撮りとか冗談じゃない重量です。

その点、(使ったことないですが)AF-Sは公称1,070gなので街撮りはもっと筋トレ用品ですが、くもる話も聞いたことないし、何よりウインウインゆっくり回って焦点探す古いこのレンズよりもAF高速でしょうし、撮るのが好きなら、しかも明るい2.8通しが必要な撮り方なら安いからとレンズギャンブル楽しんでる場合じゃないのではありませんか?

レンズ分解初心者へ告ぐ

私がなぜAF-Sにしないかは逆で、夜景メイン(AFきかない)、いつも三脚(VR不要)、バイクかクルマ移動(重さ上等)、古いレンズの方が写りいいと思ってる(200mm/F4メイン)、重い方が慎重に扱ってしまう、分解できるしめんどくさいのが楽しい系の変態なので35-70/2.8を何本もくじ引きしたのです。

普通とは真逆な、確実に分解前提なレンズとしてドキドキわくわくするド変態だけが落としていい、それが35-70/2.8ではないでしょうか?

これ書きながらメルカリの3千円見てうっかりポチって届いてバル切れ。

どちらも同じレンズ、同じ角度、ただし光の当たり方を少しだけ変えました。

一見くもってないように見えますがうっすら来てまして、左画像ではきれいに見えますが右画像のレンズ左下8時方向付近を中心に4時から時計回りに11時あたりの外周をよく見てください。バルサム切れです。

左画像は見えないよう隠したのではなく、ほんの少し角度が外れるとバル切れが見えなくなります。要するに私のように知っている人がバルサム切れしてるか確認するため少しづつ角度をずらして見える位置に来てシャッターボタン押さなければ見えないのです。カメラ詳しくないリサイクル屋さんや自称素人なのでわかりませんと言ってる人にはまず見えません。

そして後ろはカビが。撮り方の違い再び。光の角度が違うだけで同じレンズですよ。

左は故意にピントを手前にしつつレンズの反射を抑えていますが、右は故意にカビがはっきり見えるよう反射させています。ここまでカビびっしりだとレンズくもってなくても同じくらいくもってボヤボヤですから、カビとクモリのとりあえず倍満。後でわかるのですが上で解説した詰み系のラスボスに直撃しハコテンしました。ワケガワカラナイヨ。

さすがにこれ隠して出品は無いだろうと思ってますか?「ジャンク品です。カメラ詳しくないので写真で判断願います。すり替え防止のため返品不可。」としか書かれていなければ左を見て「チリかな?」とプラス思考が働き期待するかも知れませんよね。ジャンクと知って落札し評価を悪いにすると悪いで返されても当たり前です。

そこまで冒険してこの欠陥レンズ買う価値あると思います?

それでもあきらめないギャンブラーたちへ

もう何個イチか忘れた時価総額2万円を余裕で超える自分用非売品35-70/2.8です。きれいな35-70/2.8はある意味貴重映像。

どの角度でも「くもってる?」と疑う余地のない透明度で、くもってる?と思ってしまうものはコントラストが薄いので少なくともレンズ部分全体、よく見ると画像全体が白っぽく見えるはずです。また、絞りを開いて方眼が見える状態にしています。よくある向こうが真っ白では無意味なので。

ただし、しつこいですがこんなものは少しでも知識のある人間に加工されてしまえばイカサマは簡単ですし、本人に悪意がなくとも最近のスマホや一眼は勝手に良いように自動で加工してくれるので危険。そして角度によって全然くもっていない、透明に見えてしまう魔の角度があるのでハズレ引く覚悟でどうぞ。

私はその覚悟があるので引き続ける。灰になるまで。

うそです、もういい。

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